サイトマップ 日本語 English
森美術館トップページ
最新情報
展覧会一覧
パブリックプログラム
メンバーシップ・プログラム MAMC
音声/動画コンテンツ
プレス
ミュージアムショップ
六本木アート・トライアングル
六本木ヒルズパブリックアートアンドデザイン
リンク集
ご利用案内
美術館の概要
採用情報
メールマガジン
モバイルサイト
クレジット/利用条件
森美術館 パブリックプログラム

「大型美術館はどこへ向かうのか?:サバイバルへの新たな戦略」
森美術館スペシャルシンポジウム、開催レポート


世界の美術界をリードする美術館館長8名が集結。500人の聴衆が注目する中、美術館の“生き残りをかけた戦略”を熱く語り合いました。

2007年2月9日、六本木アカデミーヒルズにおいて開かれたスペシャル・シンポジウム「大型美術館はどこへ向かうのか?:サバイバルへの新たな戦略」は大盛況で終了いたしました。各美術館からのプレゼンテーション、館長たちによるディスカッション、来場者からの質疑応答が行なわれ、今後の美術館の在り方、方向性の一端を知ることができる様々な意見とヴィジョンが飛び出す、熱気のこもった3時間となりました。

南條史生 森美術館館長をモデレーターに、森美術館インターナショナル・アドバイザリー・コミッティー(1999年9月に設立)のメンバーである、グレン・ラウリィ(ニューヨーク近代美術館館長)、アルフレッド・パクマン(ボンピドゥーポンピドゥー・センター国立近代美術館館長)ニコラス・セロータ(テートギャラリー館長)、ヴェンツェル・ヤコブ(ドイツ近代美術展示館館長)、ノーマン・ローゼンタール(ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ芸術監督)、高階秀爾(大原美術館館長)、デヴィッド・エリオット(イスタンブール・モダン館長/森美術館前館長)が一堂に会した本シンポジウムは南條館長のあいさつからスタートしました。

南條史生 森美術館館長「開始のあいさつ」
プレゼンテーション
プレゼンテーション1「グローバル化する美術館の新たな問題」
プレゼンテーション2「美術館分館の新たな役割」
プレゼンテーション3「変貌するテート・モダン」
ディスカッション
■南條史生 森美術館館長「開始のあいさつ」

2006年10月に開館3周年を迎えた森美術館ではこれまで20以上の企画展を開催してきており、その活動に内外から高い評価をいただいております。森美術館は、国際的なプログラム提携・交流のため、森美術館インターナショナル・アドバイザリー・コミッティーを1999年9月に設立しました。世界を代表する美術館各館長を中心としたそのメンバーの、ほぼ全員が集合し、今回公開シンポジウムを開催することとなりました。
近年の美術ブームを背景に、世界中の美術館で拡張ブームが起こっています。改築、分館の建築、新しい土地への進出など特に大都市の美術館の多くが拡張計画を打ち出しています。MoMAは谷口吉生氏の設計による新館が2004年に完成し、さらに拡張を計画中です。ポンピドゥー・センターも現在、フランス北東部のメッスに坂 茂氏が設計を手掛ける分館を建築中、テート・モダンも隣接する土地に新館の建設を予定しています。また、ルーブル美術館(パリ)でもフランス北部の都市ランスで妹島和世氏設計による分館のプロジェクトが進行中です。これらはすべて日本人の建築家によるところが注目すべき点の一つでもあります。
日本ではバブル経済が崩壊し、その後美術館は予算を削減され、冬の時代となっています。
日本の社会では多くの美術館が運営上厳しい時代を迎えているのです。では、公立美術館の場合、もはや社会は、美術館を必要としていないということなのでしょうか。また日本では森美術館のような私設美術館への税制支援は得られないのでしょうか。
一方、アジアでは、日本に引き続き、隣国の台湾、韓国、香港はすでに美術館建設ラッシュの時期を過ぎて、今は中国に美術館ブームが起こっています。今後10年間で中国では三千もの美術館を創るという噂もあります。そしてこの波は必ず、南アジアや、東南アジア、そして中近東にも向かうでしょう。今、このような状況下で美術館はどこへ向かうのでしょうか。なぜ美術館は新しい土地に進出し、活動の幅を広げるのか。その背後にある理念はなんであり、その果実を得るのは果たして誰なのでしょうか。
■プレゼンテーション

当日行なわれた3つのプレゼンテーションをダイジェストでお伝えします。

◎プレゼンテーション1
「グローバル化する美術館の新たな問題」
 グレン・ラウリィ
 ニューヨーク近代美術館館長(MoMA)
ラウリィ館長が美術館が生き残るための挑戦課題として挙げたのが「コレクション」の重要性です。いかにコレクションを充実させるか。そしてコレクションの充実には空間を広げざるをえないと言います。さらに質の良い空間にするための立地も重要な要素。昨今では都市の中心部が移動し、かつて中心だった場所が変わるからです。そして美術館は都市に対してつねに開いた場であり、そこに暮らす人々にとって身近でいきいきとした存在であるべきだと強調しました。MoMAは民間の美術館で政府からの支援がないため、より良いプログラムの実現、質の高いものを開発するためには資金集め(助成会員、財政的支援)が重要です。今や展示のために3万uのギャラリーを必要とし、7億ドルの維持費がかかるっているのです。MoMAは1932年の開館以来、延べ8回の大小の改装を行なっています。2004年に谷口吉生氏の設計により完成した53丁目の新館はガラスを用いた独創的な建物で知られていますが、ラウリィ館長の言葉によると「より透明性をもって都市に対して開き、また美術館の中にも都市が入り込む。そして大きな作品をその新しい広い空間に再配置し、新たな複数の視点を提供している」ということ。これは美術館は“外観で示す”すなわち近現代美術とはこういうものだという提示を物理的に示していくことを大切にしているからなのです。MoMAがめざす方向性のキーワードは“増床”すること、そして“再配置”。大きな作品も新しく生まれた新館の空間に展示することで、新たな視点を提供しているのです。またMoMAではイーストリバーを渡ったロングアイランド・シティのP.S.1現代美術センターを買収し、より実験的な作品の展示構成が可能になりました。ラウリィ館長率いるMoMAの狙いは「P.S.1へ来ればつねに最先端のものが観られる」という認識を定着させることです。その狙いどおりに、P.S.1は「53丁目とは異なる階層の人々、若者が来館し、美術館は新たな発見の場を提供」しています。「成長のための拡張という意味で、質を保つこと、新しい実験の場を提供し続けること」という言葉をまさに体現していることになります。

◎プレゼンテーション2
「美術館分館の新たな役割」
 アルフレッド・パクマン
 ポンピドゥー・センター国立近代美術館館長
今年、設立30周年を迎えるポンピドゥー・センター。民間経営のMoMAとは違い、ポンピドゥーは国立の美術館です。美術だけではなく建築、映画なども含む近現代美術のための美術館ですが、それに加えてライブラリー、音楽センター、劇場として機能も併せ持っています。国立の機関として重要な作家の作品をまとめて収集するということ、また優れた現代美術を収集するという両面の役割を挙げました。パクマン館長によるとコレクションは30年間で1万2千点から6万点にまで増大。「その時代で最高のものをすくいとってもスペースは足りないが、しかしコレクションは続けなければならない」という課題があります。「美術館は展示することが務めである」。その言葉どおりパクマン館長はこの“空間の限界”を広げるために現在パリから300q離れた街メッスに分館を建設中です。パリからの長距離高速列車が停車するメッス駅裏の広大な敷地には、美術館の他に大きな広場、公共図書館も配置。坂 茂氏のダイナミックな設計でギャラリーは高い天井、広い空間を確保しパリのポンピドゥーでは数点しか見せられなかった大型のヴィデオ・インスタレーションや、これまで展示できなかった1937年所蔵のピカソの巨大な舞台装置などの展示可能になるということです。 「しかし決してメッスはパリの下請けではありません」パクマン館長はコレクションをふさわしいかたちで展示することをめざし、メッス独自の企画を尊重すると語りました。これまでも国内では芸術の地方拡散、地方美術館のサポートを国の機関として行なってきたポンピドゥー・センター。また国立の美術館の使命としてつねに“フランスの芸術活動の国際的な強さ”を重要視していることもうかがえました。「世界、そしてアジアへも目を向けている」の発言どおり、上海でも新たなプロジェクトを進行中。「国際的な作品を収集するためにはアジアやその他の地域の美術館との連携が重要。作品を貸し出すだけでなく手助けし、共に企画すること」と語ったパクマン館長。ポンピドゥー・センターの戦略は国内的にも対外的にも“これまでの壁を破る活動”だといえそうです。

◎プレゼンテーション3
「変貌するテート・モダン」
 ニコラス・セロータ
 テートギャラリー館長
この8年間で劇的な変化を遂げたロンドン。現代アートとそれをとりまく環境の大きな変化の中心となったのがテート・モダンです。セロータ館長によると「それまで近現代に特化した美術館がなかったロンドンでテート・モダンがその役割を担うことになった。昨年490万人、過去6年で3000万人もの驚異的な入館者数を記録した」「テート・モダンの成功が2012年オリンピック招致の成功へつながったともいえる」と語りました。1960年代から80年代まで稼動後、ロンドンの中で打ち捨てられ、荒廃していた発電所の跡地が、テート・モダンに生まれ変わり、このアートの新しい発信地を核にロンドンの街の中心が東へシフトしたのです。「シティでは人々の動きも変化し、大いなる経済波及効果をもたらした」 “変貌するテート・モダン”とタイトルにあるように、さらなる計画が進行中。今後の計画はテート・モダンの南側に2万3000m2を拡張、現在より60%面積が広がるそうです。そのうち展示室は7000m2、2500m2は教育普及のために使用し、パフォーマンスのための空間、ロンドン全体を見渡せるテラス、ブックショップやカフェなども併設されるとか。この地区には他のデザインミュージアムやギャラリーなどの文化施設も集まる予定で、セロータ館長は「打ち捨てられた街、緑の少ない地域に注目する新たな開発で街の性格をが変わった」と言います。また六本木のことにも触れ、「森美術館の周囲に、2週間前に開館した国立新美術館に続き、サントリー美術館、21_21 DESIGN SIGHTも開館を控え、六本木エリアが東京におけるアートの一大発信地へ確実に変貌する」ことも指摘しました。 従来、美術館へ足を運ぶ人の階層が限られていましたが、現在のテートは幅広い多数の人々を対象に活動しているそうです。「作品を展示するだけでなく、展示を生かし、情報を発信する美術館」であるということ。最近はテレビ局に対して販売できる番組を制作するなどテートは積極的に自ら発信・開発を行なっています。「人々のアートに対する感覚は、10年前、20年前とは違ってきている」「テート・ブランドを世界に広めたい」という言葉どおり、テート・モダンは人々と街に刺激を与え、今日もまた変貌を遂げるべく歩みを進めています。
■ディスカッション

美術館が街にできることで、その地域に与える影響は?という切り口で8名のディスカッションがスタート。その後は資金調達、コレクションの質、美術館としての仕事など活発な議論となりました。(以下は登壇した上記4名以外の館長の主な発言を抜粋)

デヴィッド・エリオット
(イスタンブール・モダン館長/森美術館前館長)

「都市と美術館は有機的な関係にある。そして美術館はアートだけでなく社会的な役割を担う」。また「美術館でアートに出会うーそのファーストインプットも大切」だと語るエリオット氏。
「展示するアートの良し悪しを教える場でなく、そこに集まった人々の中で対話が生まれる場所」がエリオット氏が考える美術館の在り方です。「美術館は倫理的な責務を担う場所でもある」、と語りました。
高階秀爾(大原美術館館長)
東京の国立西洋美術館の館長を経て、現在は岡山県倉敷市の大原美術館の館長である高階氏。大都市の大型美術館と地方の中型美術館の両方の経験から「21世紀は美術館と社会のつながりが一層重要になる」と語ります。「倉敷のように小規模な町では周囲の文化施設が少ないため、美術館は“地域における芸術の中心”となる」。おのずと結びつきは強く、街の人々との接点が美術の展示だけでなく音楽祭の開催や祭りの企画など多岐にわたるのです。「大都市のパリやロンドンが今や世界中からの集客はもちろん、地域の人々との関係を深めていることも同様」。倉敷ではアーティスト・イン・レジデンスを以前から実施し、作家が町に住み、作品を展示し、それらを収蔵品として加えるという活動で若い才能を育てています。
ノーマン・ローゼンタール(ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ芸術監督)
「かつて30〜40年前までは美術界は小さな世界だった。西ヨーロッパのいくつかの首都とニューヨーク、L.A、東京といった場所に限られていたのが、今では大きな産業になった」とローゼンタール氏。美術館をつくるのは簡単だが、莫大な値のつく作品の管理、施設の維持費、その他の諸々の経費と労力は莫大なもので、いかに運営し軌道にのせていくかが問題であると語りました。美術館と街についてはスペイン バスクにあるビルバオ・グッゲンハイム美術館を一例に、10年前誰もその都市の名前を知らなかったが、今や美術館の存在を通して“ビルバオ“は多くの人々に認知されていると指摘。ローゼンタール氏の「美術館はその街の名と存在を世界地図に発信する」という印象的な言葉を残しました。
ヴェンツェル・ヤコブ(ドイツ近代美術展示館館長)
「美術館の役割は大衆に大きな影響を与える場、人々が広い視野でものごとを見つめることができる素地”の提供にある」「美術館を私たちの未来に立ちはだかる問題やどのように行動すべきか考える場として存在させる」ことがヤコブ氏の考えです。コミュニケーションの新たな在り方を見つめ、新しい美術館はどうあるべきか各国の美術館同士で話し合い、連携を大切にする一方、観客へのさまざまなアプローチも実施。「これまで美術館へ足を運ばなかった人々を対象に、ツアーガイドを導入し、観客との活発な意見交換を行なう。美術館を身近に感じてもらうことで家族や友人を連れて2度3度と来館してもらうことができる」と語りました。
最後に、南條館長はディスカッションの中で美術館や美術そのものの国際化について触れました。「かつては欧米の美術が世界的地位を握ってきましたが、今やあらゆる文化が対等であり、そのような文化多極主義の時代にいかに新たな指針を確立するかが、急務である」。サバイバルへの鍵は、美術館が独自性を踏まえながら、世界の美術に精通し、地域の発展に寄与し、そして観客を惹きつける発信を続けていくことにあるといえるでしょう。
PAGE TOP
MORI ART MUSEUM